2017年1月9日月曜日

「中国百科攻略ノート」 言語 「漢字」についてアップしました

中国百科検定攻略への道 第4部 文化・芸術・風俗習慣 9 言語編

第4部第9章第10節 漢字 を追加しました。

本教科書では、以下の3つの側面から漢字を説明している。

  • 漢字の構造
    世界に類を見ない表記法である漢字の最大の特徴は、新しい事態を表す文字の創出システムをそれ自体が持つ点である。つまり、漢字は意味や音の構成要素を組み合わせ、新しい文字を創造するシステムを内蔵している。しかもその構成要素を次々継承させていく機能を持っているということである。
  • 表語文字
     漢字は表意文字といわれるが、そればかりではなく、一字一字が一つ一つのことば(単語)をあらわしている。これを「表語文字」とよぶ。従って漢字を「表意文字」と言う人があるがそれは不適当である。漢字は「意」のみをあらわしているのではなく、「語」をあらわしている。
  • 漢字のリンク作用
     漢字が異なる地域や、民族その他もろもろの概念をリンクするのである。広大な地域や民族を包含する中国のもつ一体感に漢字が果たした役割は大きい。これは漢字が表音文字でないことと無関係ではない。文法、語彙と比べて発音の変化は急激で体系的に起こる。ある地域の言語音の変化が文字に反映するなら、音の変化は言語の変化にそのままつながることになる。
     もし言語に変化が起これば、そこに一体感は消失してしまう。
しかし、これだけでは何か分かったようで分からない感じで、「腑に落ちた感じ」がしない。そこでもう少し漢字の持つ特徴や漢字はいかなるものかなどを加えて頭の整理をしたい。
  •  白川静氏は「字統」(平凡社)の中で、漢字について以下のように述べている。少し長いが下記に引用する。

漢字の構造は、その文字体系の成立した時代、今から三千数百年以前の、当時の時の生活と思惟のしかたを、そのままに反映している。あるいはまた、それより以前の、文字がまだなかったいわゆる無文字時代の生活と思惟の仕方が、その時点において文字に集約され、その一貫した形象化の原則に従って、体系的に表現されている。漢字の歴史は、その無文字時代の意識にまで、遡ることができるものといえよう。文字の発明が、人類の文明への最初のステップであったとするならば、漢字は文明以前の原始文化を文明への最初の段階において形象化し、文字としての体系を与えたものということができる。そして歴史時代に入るとともに、文字はその文化の最も重要な担持者であった。文字はつねに過去の文化の継承者であり、またそれを通じて、新しい創造への源泉であった。その機能は、現在においても、すこしも変ることはない。

  • また、藤堂明保氏は「漢字源」の中で、漢字について以下のように述べている。これも少し長いが引用する。
中国および中国周辺の諸国に伝えられた「漢語」を書きあらわすため、紀元前一三世紀に出現して今日まで用いられている文字が、漢字である。 漢字は、意味をもつ言語(単語または、単語素 ) をあらわした文字であるから、表語文字Word Characterと呼ばれ、一般には表意文字であるといわれる。そして日本の仮名や、ローマ字のような単音・音素だけをあらわす文字と違い、官kuan、良 liangのように、意味をもつ音節全体を一字であらわしている。また、エジプトの象形文字は、フェニキアからギリシアへと伝わる間に、もとの意味を離れて単なる表音文字に転化したが、漢語はその発音と意味を少しずつ変化させたものの、漢字自体は3000年の歴史を生き抜いて、今日まで伝わったため、その本質をいまだに保存している。


  • さらに、落合淳思氏は、その著書「漢字の成り立ち」(筑摩書房)の中で、以下のように述べている。漢字源の中の記述とほぼ同じであるが、敢えてこれも同様に参照する。
漢字もそうした発明品のひとつである。しかも、古代文明の文字としては唯一、現在も使われているという特徴がある。 漢字よりも古い文字として、メソポタミア文明の楔形文字や古代エジプトのヒエログリフ、あるいはインダス文明の印章文字が知られているが、いずれも今では一般に使用されていない。ヒエログリフについては、一部が形部を変化させてアルファベットになったものの、発音のみを表す文字として使われたため、個々の文字が持っていた意味は失われてしまった。
これで、色々の文字体系の中で、漢字の持つ位置、意義と漢字とはそもそも何ぞやという質問には大づかみながら答えられていると思う。



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