2017年1月31日火曜日

「中国百科 文化・芸術」第10章文学 「現代中国の作家たち」

4-10.01 現代中国の作家たち

この節の表題の「現代中国の作家」というカテゴリで見た場合、最大の影響を与えた人物は魯迅を置いて他はない。

20世紀前半:革命と戦争の時代

  • 魯迅(1881~1936年)は、浙江省の古都、紹興の官僚の旧家に生まれた。少年期に生家は没落し、給費制の学校を経て日本へ留学した。はじめは医学を志したが、中国民衆の覚醒への道を求めて文学に転じた。
    1918年、口語体で書かれた中国初の短編小説『狂人日記』は、「人が人を食う」儒教イデオロギーに絡めとられた人間の、「子どもを救って…」という祈りで終わる。
    『阿Q正伝』では、日雇い農民の阿Qが精神勝利法(現実生活での敗北を心の中で理屈をつけ勝ったことにする思考法)を重ねるうちに、処刑されてしまう。また、数多くの雑文・雑感を発表し、時の権力と闘った。
    紹興の文化に根ざした散文『朝花夕拾』『野草』も奥深い魅力がある。
  • 四川省出身の巴金(1904~2005年)は五四運動の影響を受け、大地主の生家を離れた。
    その体験から、旧家の大家族制の下で苦悩する三兄弟を長編小説『家』に描いた。『寒夜』では、抗日戦期の重慶に生きる弱者の哀しみが胸に迫る。
    文革で他の作家と同じく迫害されたが、文革後、自らを単なる被害者ではなく加害者だとして、深い内省と批判を『随想録』(1978-1986)に綴り、文革博物館の建造もよびかけた。(1985年国立現代文化館)
    1977年には、中国作家協会主席も勤めている。
    激流三部曲: 家・春・秋
    愛情三部局: 霧・雨・電
  • 老舎(1899~1966年):満州旗人(清代の軍事社会凪織、旗に属する満州人)の父が戦死し貧しい家庭に育った。
    北京の人々を哀感漂う筆致で活写した『駱駝祥子』、『四世同堂』がある。中華人民共和国で人民芸術家と称されたが、文革で紅衛兵の暴行を受けた後、亡くなった。
  • 丁玲(1904~86年):『莎菲女士の日記』で愛と性、自我に切りこんだ。国民党に夫を処刑され自身も幽閉を受け、のち解放区へ脱出した。
    短編小説『霞村にいた時』は、慰安婦にされながらも中国のために密偵を果たした女性の、明日への一歩を見つめた作である。 
  • 苗族など水辺の民を措いた沈従文『辺城』、
  • 日本軍の中国東北地区侵略で故郷を追われた粛紅の『呼蘭河の物語』(注:呼蘭河:黒龍江省、松花工の支流)
  • 茅盾の壮大なリアリズムの長編『子夜』
  • 上海を措いた張愛玲『傾城の恋』
  • そして聞一多や朱日清の詩作も、民国期の秀作として見逃せない。
  • 解放区では超樹理『小二黒の結婚』が歓迎され、のちに人民文学のシンボルとなった。

20世紀後半の改革開放から21世紀へ

文学に強い抑圧がかかった50年代から70年代を経て、80年代には多様な作家の才能が花開いた。
  • 右派のレッテルを貼られて約20年間執筆の機会を奪われた王蒙は、人物の意識の流れに沿って時空を移動する手法で『胡蝶』に自己の政治的運命への内省を反映した。
  • 両親が政治に翻弄され幼少期から孤独だった残雪は、『黄泥街』などグロテスクで不条理な世界に読者を誘う。
  • 文革中に知識青年として農村で生活した韓少功の『爸爸爸』
  • 文革期社会への省察に満ちた王小波『黄金時代』、
  • 上海を活写する王安億『富萍』
  • 阎連科:『丁庄の夢』(エイズ問題を描いた)
  • 余華:『活きる』も読者を魅了する。
  • 劉賓雁『人妖の間』、
  • 陳桂棣・春桃『中国農民調査』など、ルポルタージュの成果も大きい。
  •  贾平凹など、農民出身の作家も活躍がめざましい。
  • 2012年ノーベル文学賞に輝いた莫言は、1955年に山東省高密の村に生まれた。飢餓と抑圧にさらされている農村から脱出するため解放軍に入隊し、創作を始めた。 『透明な赤いカブ』、『赤い高梁』(後に映画化)、『蛙鳴』など、「幻想的なリアリズムで民話と歴史、現代を紡ぐ」小説が評価されている。
  •  21世紀の若手作家では、ブロガーの韓寒や、ライトノベル作家の郭敬明、古典の素養も豊かな笛安などが活躍している。

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